キラキラひかる街並みを私たちは二人で立ってみてた。

大人になんてなりきれないのに、背伸びして、歩道橋の上からみてた。

キラキラしているのは、下瞼にかかる大粒の涙かもしれない。

この手を離せば私たちは終わりを迎えなければならない。

いつだって、時は残酷に過ぎていく。


「まいか、俺いくわ…」

待ってと言えたらどんなに楽だろう、繋いだ手を話さないようにぎゅっと握り返せたらどんなに良かっただろう。

19歳の微妙な私は、あっけなく頷いていた。


昼間は湘南まで行って、江ノ電に乗り遅めのブランチでパンケーキを食べた。
海が見える窓際に案内してもらって二人ともテンションが上がった。
冷たく冷えた炭酸水を喉に流して、大人ならもっとかっこよく飲めただろうけど、曖昧な表情をしながら乾杯した。

お腹を満たされた二人は、のんびりゆっくり、極楽寺を目指した。

6月になれば、紫陽花が見物のこの場所も、今はただただ静かで…
観光客に混ざりながら、成就院を目指した。

途中どうしても行きたいフランス雑貨があって、寄り道をした。
結構急な坂道もあり、二人で手を繋いで歩いた。

フランス雑貨の店内は、お世辞にも広いとは言えなかったけれど、とても可愛いカフェオレボウルや、オーガニックの石鹸や香水、良質な生地の服が売ってあった。

古民家を改修された店内は、少しすきま風が入るものの暖房が効いていて冷たく冷えた耳を赤くした。

水色の可愛いカフェオレボウルを買って、成就院に向かった。

階段を登って、院へ入ると龍が待ち構えていた。
二人は手を洗い、口をゆすぎ、本堂をみた。

「冬馬!!何をお願いする?」

「知りたい?」

「知りたいって言っても教えないでしょ」

「当たり」

相変わらずの、はにかんだ笑顔の冬馬に心奪われていると、冬馬は無理矢理前を向かせた。
私は、本当に幸せを噛み締めた。

二人の幸せを成就させてください…

本当に願った。


遅めのブランチが効いていて、お腹は減らない。

でも、歩き疲れて甘いものがほしくなった二人は、線路を目の前に構えるお茶屋に入った。

白玉きなこの黒蜜かけ。

二人で食べたら何だって世界一美味しいごちそうになる。

夢中になって食べている時、ふと、冬馬をみた。

走り去る江ノ電と、和庭園をじっと見つめた冬馬の横顔があった。
何を考えているのだろう。
冬馬の瞳に温かみが消えていた。