たぶんあの日以来。

バスケで一緒に優勝して、喜びが爆発した時以来。

あの頃よりもずっと肉が落ちて、骨ばって細くなった肩。いる。ここに。ぬくもりを持った、伊吹が。



「ちょっとアンタだけ何してんのよ朔。あたしにも触らせろ」



そんな感情の爆発から起こった感動の抱擁を、ベリっと引き剥がしたのは紅音さん。



「えぇなになに紅音さ、っわ」



ぎゅう、と頭を抱きかかえられて、動揺する伊吹。
俺の行動を見てたらしい奴らがまた集まり出して、人だかりになって。

「なになに朔と言い何なの、どうしたんだよお前ら」ときょどりながら撫で回されたりハグされたり、今度は伊吹の引っ張り合い戦争が勃発した。


だけどみんな肉と違って手つきは優しい。

相手は命が入っていて温かい、伊吹だからだ。



よく分からないままノってきた伊吹は自ら悠真の腕をつかんで頭を抱え込んで撫でてみたり歳下たちを集めて戯れてみたり、これみよがしに小麦にキスしてみたり。そしてやっぱり怒られたり。



その光景を、少しだけ離れたところでユウジとミユキ、茅野先生が見ていた。

見て、微笑んでた。

ミユキに至っては嬉し泣きしそうにしてた。




なあ、ほら、伊吹。


お前は愛されてるな。こんなに周りに人がたくさんいる。慕われてる。

もう気付いてるよな。

自由に生きて、好きなことやって、気ままに歩いて自分の道、全力で走ってきたお前のこと、こうやってみんなが好きでいる。


お前のこと手放したくないって泣いて求めたり、お前が決めたお前の道を寄り添って一緒に走ってみたいって、思ってるやつがこんなにいる。もっといる。


お前のことだから、もう知ってるよな。



好きなんだって、愛してるってこと。

俺たちがみんな、お前のこと。