「来てくれてよかったな」

「俺が呼んだんだから来てくれるだろあいつは」

「お前のそういうところマジいい性格してると思うわ」

「急に褒められたー」



褒めてねえけど別に。

これで一通りって感じ。伊吹があの日やりたいって言ってたこと。この調子だし、次は何したがるか分かんねえけど。


でも俺らはたぶん、こいつがやりたいって言ったこと全部やってやるんだと思う。だってこいつが望むことなんだし。

全員、なんか甘いんだ、こいつには。




「朔」




いつもより少し硬い伊吹の声が、耳に届いた。

もう、分かる。

伊吹の声はまたか弱くなって、笑うのもへらっと息を吐くだけになって、声を出すために息を吐くために腹筋に力を入れるの、ちょっと辛くなってきたんだなって。


だけど分かる。こいつの声の色。

もう何年聞いてきたと思ってんだ。



「俺さあ」



硬い声。だけどきっと表情は柔らかいんだろう。目も頬も、昔からは考えられないくらいやさしく力が抜けてるんだろう。

立ってる俺が座ってる伊吹の顔を、それを確認するためにわざわざのぞき込むことはないけれど。




「俺な、もう死ぬのこわくねえよ」