その日、伊吹の晴れ男パワーは惜しみなく力を発揮した。




青い空。白い入道雲。セミの合唱。カラッと渇いた風。
文句ナシの晴天。

そして、文句ナシのバーベキュー日和。




「またやりたい事ひとつ叶ったなあ、伊吹」




広い橘家の丘。

ユウジが肉を焼いてる隣にミユキと、周りにはかつて倉庫で毎日会っていた顔なじみのやつら総勢25人が集結している。


伊吹が呼んだらしい、忙しいだろうに颯爽と登場した茅野先生は、折りたたみ椅子で背もたれにもたれかかっている伊吹の隣に来て、そう言った。



「いいだろ」

「楽しい仲間いっぱいいるんだな、伊吹の周りには」



戦争だと言わんばかりに肉の取り合い合戦を開催している若い男女たちを見て伊吹は得意げに笑い、茅野先生は目を細める。

あいつら、中身まったく成長してねーな。



「お前らこれ茅野先生の分だからな!ダメだぞこの皿の肉を見るな!狙うな!」



ユウジの怒声が響いて、若者たちからはえー!と声が上がる。

「はい、茅野先生!早くこれを!」紙皿を手渡すユウジを見て「なんていい人なんだ伊吹のお父さんは……」そうこぼした茅野先生は戦争のうずに巻き込まれるように煙の方へ行ってしまった。


ケラケラと伊吹は笑う。