駆け寄って、身体の横にかがみ込んで。肩をゆすった。



「……あ、れ……あかねさん、?」

「っ」



目が開いた。うすく、ゆっくり。

掠れた声であたしの名前を呼びながら、伊吹はひどくゆるい動きで上半身を起こす。やがてトン、と幹に背をあずけて、覚醒したばかりで頭が痛いのかうなりながら眉間をおさえた。



「よ、久しぶり」



寝てたのか、なんだ。ここ、いい風あたるもんな。



「びっくりしたぁ。紅音さん久しぶりっす」



がしがしと頭を撫でながらペットボトルを押し付けてやる。

細くなったし、白くなったな、やっぱり。



「えっありがとう紅音さん」



頭をまぜられながら受け取ったコーラに目を落として、伊吹は笑った。
差し入れ。コドモ舌なお前に。



「何してんの、こんなとこで」

「空明るいのに月でてんなーって」

「おぉ、月を見上げられるようになったのか」



丸くなったなあ、お前も。
伊吹の隣に腰を下ろしてあぐらをかく。お、いい風。いい空。


ぼうっと空を見る伊吹のほおに、風でなびいたあたしの髪があたって。



「ブハッ。やめて紅音さんくすぐったい。なんかいいにおいするし」



ヒィと腹を抱えながら伊吹が吹き出した。
なんでだ。なんであたしからいいにおいして笑ってんだこいつ。なんつー失礼なクソガキだ。

このやろ。