「シュウ。それがお前の本音なんだな?」



シュウはお父さんをスッと見つめ、コクリと頷く。



「俺の体を心配してくれてるのはわかってる。それが父さん達の愛情なのも伝わってる。だけど、俺はずっと苦しかった。鳥かごの中にいるような気分だった。俺はもっと自由に好きなことがしたかったんだ」


「此処に来て好きなことが出来てるのか?この一ヶ月、お前は幸せだったのか?」


「うん。幸せだった。仕事は大変だけど、職場の人は良くしてくれる。家に帰ればサチがいて、おじさんやおばさんも街の人も暖かい。俺は、今のこの生活が充実してる。初めて自由だって思えた」



シュウの正直な思いを聞くと、お父さんは「……そうか」と呟いた。

そして、一呼吸置くと座布団から降りて正座をし直し、再び口を開いた。



「哲ちゃん。菜摘さん。この度はご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。本来、親の私達が息子の気持ちを一番に理解してあげなければいけなかったのに、愛するがあまり自分達の考えだけを押し付けて息子の本当の気持ちが見えていませんでした。それをこんな形になるまで気付かないなんて、親として失格です」


「あなた……」


「こんな私達に出来ることは、今は見守ってやることだけだと思ってます。うちに無理矢理連れて帰るよりも、自分の思う通りにさせた方が息子のためになると考えます。それに、私と家内にも頭を冷やす十分な時間が必要です。お二人にはご迷惑をお掛けしてしまいますが、今後も息子のことをお願い出来ますでしょうか?」



お父さんは哲二さんを真摯な目で見据える。

シュウの想いがお父さんにちゃんと伝わったとはっきりとわかった。