門を潜り、玄関に続く石畳みを緊張した面持ちで歩く。

シュウが横開きの扉を静かに開けると、家の中はほっこり温かくて、檜の香りがふわっと鼻を掠めた。



「よく来たね」



奥から白髪混じりの眼鏡を掛けた瘦せ型の男性が出て来て、私は背筋をピシッと伸ばした。



「おじさん、お久しぶりです。突然連絡して、無茶なお願いをしてすみません」


「いいんだよ、シュウ。そちらの女性がサチホさんかい?」


「はい。電話で話した子です」



そう言って、シュウは後ろに立っていた私をエスコートするように隣りに並ばせた。



「は、初めまして。鷹野佐知穂です。この度は、ご迷惑をお掛けしてすみません」



深く頭を下げると、男性は柔らかな声色で「ほら、頭を上げなさい」と私の肩をトンッと軽く叩いた。



「そんな緊張しなくてもいい。さぁ、とりあえず上がりなさい」



私達はリビングに通されると、男性に対面するように座布団に腰を下ろした。


家の中はもちろん純和風の造りだ。
二十畳以上はありそうなぐらい広い和室のリビングには、太くて立派な大黒柱が聳え立っている。



「よく来てくれたわね、二人共」



襖が開くと、エプロンをした女性がお茶をお盆に乗せてリビングに入ってきた。



「おばさん、お久しぶりです」


「初めまして、鷹野佐知穂です。この度は突然お邪魔してしまいすみません」



シュウに続いて挨拶すると、女性は「ふふふ」と穏やかに微笑んだ。



「そんなに改まらなくていいのよ。自分の家だと思って寛いでね」



突然来て迷惑を掛けているにも関わらず、二人の優しい言葉と笑顔に胸が熱くなった。