「見ちゃ駄目っ‼︎」



シュウが見ていた教科書には“消えろ”とか、もっと残酷な事がびっしりと落書きされていて。
その他にも破られたり、墨を零されて真っ黒にされてたりと、ほとんど教科書の役目を果たしていない。


それを見て、シュウは何を思っただろう。
シュウの次の一言が少し怖い。


シュウは静かに教科書を閉じると、私をジッと見据えた。



「なぁ、サチ。俺と一緒に住まないか?」



思いも寄らないシュウの言葉に、「…え?」と素っ頓狂な声を上げる。



「こんな冷え切った家を出て、学校も辞めて。どこか遠い所に行こう。二人で」


「シュウ……」



私を真っ直ぐに見つめる瞳と、真剣過ぎるぐらいな表情のシュウ。
冗談じゃないことぐらい聞かなくてもわかる。


シュウは本気だ。



「だ、駄目だよ」


「なんで?」


「シュウに迷惑掛けれない」



さっき警察署でシュウのご両親と会った時、二人が凄くシュウのことを大事に思ってるんだとわかった。

もう二度と会わないっていう約束は守れなかったけど、せめて治療の邪魔にはならないようにしたい。



「迷惑じゃない。俺がそうしたいんだ」


「でも、シュウは治療に専念しないと」