激しい雨音の中、大好きな声が聞こえて反射的に足がピタッと止まった。

その瞬間、目の前を大型トラックが水しぶきを上げて通り過ぎる。


ゆっくりと声のした方を振り返ると、そこには焦ったように目を大きく見開いて肩で息をするシュウの姿があった。



「シュウ……」


「何やってんだよ‼︎馬鹿‼︎」



シュウは持っていた傘を投げ捨てると、すぐに駆け寄って私の手首を乱暴に掴む。



「なんで……どうして……?」


「どこも怪我ないか?お前……なんでこんなこと」



シュウが私の存在を確かめるように頬を両手で包み込むと、強引に上を向かせる。

交わる視線。
シュウの瞳に私が映る。



「良かった……間に合って、ホント…良かった」



そう呟くように言うと、シュウは私を強く抱き締めた。


雨ですっかり冷え切った体が、シュウの体温でほんのりと温かい。
その優しくて大きな温もりに、自然と涙が溢れた。

生きてる…そう実感した。



「シュウ……シュウ……たすけ、て……もうやだよ、一人は嫌…」



シュウの背中に縋り付くように腕を回す。


もう無理なんだ。
あの母親の側にいることも、シュウのいない人生も。



「一人じゃない、俺がいる。俺がサチの側にいるから」



そう言って、シュウは更に抱き締める腕の力を強めた。

一向に止まない雨の中、私はシュウの腕の中で思いっきり泣いた。