挨拶を終えたシュウが私に気付いて目を見張ると、「サチ……」と呟く。
私は、私なら大丈夫だよと言わんばかりに目を細めて微笑んで見せた。


そっか。そうだよね。
シュウは早々に迎えに来てくれる優しいご両親がいるんだ、と心の中でホッとしつつ、その温かい存在に羨ましさが溢れた。



「あなたがサチさん?」



シュウの隣りにいた女性、恐らくシュウのお母さんが険しい表情で私の前まで来て足を止めた。
穏やかではない雰囲気にゴクッと唾を飲むと、「はい」と頷いた。



「金輪際うちの子に近付かないでほしいの」


「え……?」



まさかそんな事を言われるとは思わなくて、言葉を失った。



「あなたと出会って、うちの子は毎日病院を抜け出すようになったわ」


「母さん!それはサチのせいじゃないって言っただろ!」


「あなたは黙ってなさい!」


「黙ってられるかよ!サチにこれ以上変なこと言うなら、俺は病院には二度と戻らない」


「シュウ!あなた、自分の体の事ちゃんと考えなさい!お母さん達がどれほど心配してるかわかってるの⁉︎あなたが抜け出すたびに、母さんがどれだけ不安になるか……」