「今から家来ない?」


「今からですか?」



家って…カエデさんの家?
それってつまり……え?そういうこと、だよね?


カエデさんは握った私の手をグイッと引っ張って引き寄せると、息が掛かりそうな程の至近距離で「嫌?」と声を低くして言った。目がギラリと光った気がして、恐怖で目を逸らす。



「い、嫌っていうか……その、もう少し考えさせてほしい、というか」



こんなこと経験のないことだから、どうやって断ったらいいのかわからない。



「じゃあ、家来て二人っきりで話そう。俺のことはもちろん、サチホのことも教えてほしいんだ」


「でも……っ」



「な?行こ」と無理矢理引っ張っていこうとするカエデさん。


い、嫌っ……
どうしたらいいの?

誰か…助けて……

シュウ……っ‼︎助けてっ‼︎



「サチっ‼︎」



目をギュッと瞑りながら、足に力を入れて引き摺られないように必死に抵抗していると、大好きな声が私の名を呼んだ。



「……っ、シュウ‼︎」



シュウの声に一瞬カエデさんの手の力が緩む。その隙に私はその手を振り払って、シュウの元へ駆け寄った。