「なぁ、サチホとシュウって付き合ってんの?」


「え?つ、付き合ってません」



付き合ってるなんて滅相もない。
シュウみたいなキラキラした人と私みたいに暗い人間、似合うわけないし。


私はシュウに惹かれてる……
ううん、惹かれてるなんて言葉じゃ収まりきらない。

私はシュウが好きだ。

だけど、この気持ちを言えるほど、自分に自信も勇気もない。


カエデさんは私の答えを聞くと、「そっか」とホッと息を吐いた。



「じゃあ、俺立候補していい?」


「立候補って、何の?」


「サチホの彼氏」



さっきまで恥ずかしそうに顔を赤くしながら視線を右往左往させていたカエデさんは、突然ガラッと空気を変えてニヤリと笑うと、私の目を真っ直ぐに見つめてくる。

その逃すまいと言わんばかりの強い瞳に、私はゴクッと唾を飲んだ。



「ま、またまた……ご冗談を、」


「冗談じゃないよ」


「っ……!」


「考えてくれない?俺、絶対幸せにするし」



カエデさんは目を逸らさずに、私との距離をジリジリと詰めてくる。


なんか…怖い……
いつもニコニコしてるカエデさんじゃない。
目の前にいるのは、私の知らない男の人だ。



「で、でも私…カエデさんのことよく知らないし」


「これから知ってけばいいだろ?」



そう言って、突然手を握られ、驚いて咄嗟に手を引っ込めようとするも更にグッと力を込められた。