正直、図星だった。
この街でずっと暮らしてるんだもん。

この辺のことはだいたい知ってる。

誰にも見つかりそうにない静かな場所なんて此処にはない。


この街は、会社も大学も多く人が多い。
中心部なんて昼も夜も人で溢れ、静まる時が殆どなく“眠らない街”と言われる程だ。



「本当に誰にも見つからない場所で死にたいって思ってるなら、電車に乗って田舎の方に行けばいい。なのにそれをしないのはなんでだ?」


「それはっ、」



シュウの目力に言葉が詰まる。
心を見透かされてるようで、咄嗟に視線を逸らした。



「意気地なしとはまた違う。サチは本当は死にたくなんてないんだろ」


「違っ…」


「必死で戦ってるんだ。心の奥で逃げたい気持ちと生きたい気持ちが」


「そんなんじゃ、」



“そんなんじゃない”
そう言い掛けて、言葉を飲み込んだ。


そんなんじゃなくない。
本当は、私だって死にたくなんてないんだ。

同世代の子と同じように普通に暮らしたい。


友達と楽しい時は笑って、悲しい時は泣いて、ムカついたら喧嘩して、でもその度に仲直りしてまた一段と仲良くなって。

恋だってしたい。手を繋いで放課後に制服デート。行く場所はゲームセンターか映画館がいい。帰りにアイスクリームを買って、半分こしながら食べて。


あと…本当はお母さんと友達のように買い物とかしてみたかった。あの母親だとその願いは叶わないけど。


一番の願いは、お父さんに会いたい。

『私、死ぬの』なんて言いながら、お父さんに会うためにお金を貯めてた私。矛盾も良いとこだと思う。