『好きでやってるからいいの』



この時は別に無理矢理手伝わされてるなんてことはなく、私から進んでやっていた。


私がやることで、まだ優しかった母親が『ありがとう』って言ってくれるのも、私が作ったご飯をお父さんが『美味しい』って残さず食べてくれるのも嬉しかった。



『サチは本当に良い子だな』



そう言って、お父さんは私の頭を撫でる。


お父さんの手は大きい。
大きくて、ゴツゴツしてて。それでいて温かくて。

その手に撫でられるのが大好きで、私はその度に幸せを感じた。



『サチ。何があってもこれだけは覚えておいてくれ』



撫でてる手を止めると、突然真剣な表情をして私の両肩に手を置くお父さん。

『なぁに?』と首を傾げると、お父さんは私の目を真っ直ぐ見据えた。



『父さんは世界で一番、サチを愛してる。どんなに時が経っても、どんなに遠く離れても、それは絶対に変わらない』



『わかったか?』と、肩に置く手の力を強める。



『うん!サチも!お父さんのこと大好きだよ!お父さんのこともお母さんのこともだーい好き‼︎』



私がそう言うと、お父さんはふっと目を細めた。



今思い出すと、お父さんのあの笑顔は物憂げで、目には薄っすらと透明の雫が滲んでいたっけ。



その翌日、朝起きるとお父さんの荷物は
全て無くなっていた。



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