「マジむかつくな‼︎なら、お前が大事にしてるこの汚い人形切り刻んでやるよ‼︎」



私は目を見張った。


どうして人形がここに⁉︎
今日は学校には持って行かずに、タンスの奥の方に隠してあったはずなのに。


母親は何故か床に投げ捨てられてた私の宝物の人形の髪の毛を乱暴に持つと、ハサミを取り出した。



「やめて‼︎」



鞄を投げ捨て、人形を必死に奪い取ろうと母親に掴み掛かる。



「これは大事は物なの!お父さんが買ってくれた宝物なの!」


「ああ⁉︎あいつはお前を捨てたんだ!お前を捨てて、他の女のとこへ行ったクソ親父が残したもんを今でも大事にして、お前は正真正銘の馬鹿だな!」


「お父さんは私を捨てたわけじゃない‼︎」


「捨てたんだよ!」


「違う!絶対に違う‼︎だって、優しかったもん。家を出る日まで、お父さんは優しかった!私のこと世界で一番愛してるって言ってくれたもん‼︎」



そうだ。お父さんは私を捨てたわけじゃない。


お父さんは…お父さんは……
私を、見捨てたりなんかしない。