◇◆◇
「あ……お母、さ……」
家に帰ると喉を潤すためキッチンに向かった私は、ダイニングキッチンのドアを開けてすぐに後悔した。
母親が二人掛けのテーブルに突っ伏している。テーブルには殆ど空っぽの一升瓶のお酒。手には透明の液体が入ったグラス。
確かあの一升瓶には、まだ三分の二ぐらいお酒が残っていたはず。
そこまで母親はお酒に強いわけじゃない。突っ伏してる所を見ても、今の時点で相当酔っているだろう。
母親は私の声にピクッと反応すると、ゆっくりと頭を上げてボサボサになった髪を掻き上げた。
「……ねぇ、酒ないんだけど」
「あ……ご、ごめんなさい」
「ごめんで済んだら警察いらねぇんだよ!とっとと買って来い!」
そう言って、母親は一升瓶を思いっきり床に投げつけた。
ガンッ!と大きな音に、肩を激しく揺らす。
心臓がドクドクと嫌な音を立て始め、手に汗が滲んだ。
「で、でも…お金がなくて」
必死に震える声を絞り出す。
怖い。
家でこんな風にお酒を飲む時は、大抵機嫌が最高に悪い時だ。
お酒も入ってるし、何をするかわからない。
母親はグラスの中のお酒をグイッと飲み干すと、私をジロリと睨み付けた。
「はぁ?お前の金があんだろうが。私が知らないとでも思ってんの?人形の服、作ってネットで売り捌いてんだろ」

