金髪男は、さっきよりももっと大きな声で呼び止めようとする。


何なのよ、マジで。注目されちゃうからやめてよね……


関わりたくない。私は平穏に最期を迎えたいんだから。


早くここから逃げ出したくて小走りで駆け出そうとした、その時。



「鷹野佐知穂(タカノ サチホ)‼︎‼︎」



広場に響き渡るぐらい大きな声で、男は私の名前を叫んだ。



「な、なん…で……」



ピタッと足を止めてゆっくり振り返ると、男は記念碑に寄り掛かりながらポケットに手を入れ、ニヤッと口の端を上げて笑った。



「なんで私の名前……」



確かに私の名前は鷹野佐知穂だ。


タカノ サチホなんて同じ名前の人に今まで一度だって出会ったことはない。


だから、紛れもなくこの人が呼んだのは私。



でも、なんで?なんでこの人が私の名前を知ってるの?


私の記憶の中にこんな人、存在しない。



「やっぱり、鷹野佐知穂だ」


「…なんで私の名前知ってるの?」



金髪男はゆっくりと私に近付いてくる。


私から目を逸らすことなく。