放心状態で、ただ濡れた地面を見つめる。


すると、ガタガタと外から物音が聞こえ、開かなかったドアが思いっきり開いた。



「うっわー…ビショビショじゃん。まじウケんだけど」


「本当だ。ここまで上手く掛けるなんて、さすがコウノちゃんだね」



ドアを開けるなり、私を見て嘲笑う女生徒達。そして、その中心には腕組みをしながら優越感たっぷりの笑顔を顔に貼り付けたコウノがいた。



「どう?お湯加減は。あんた、お風呂に入れないみたいだから洗ってあげたんだよ。感謝しな」


「ねぇ聞いた?“助けて下さいっ!”だって。必死になっちゃって馬鹿みたい」



キャハハハと、トイレにコウノ達の高笑いが響く。



「コウノちゃんの“助けてあげる”っていう演技も凄かったよ!」



ああ、そうか。
騙されたんだ私。


ホント、馬鹿みたい。
コウノの演技にすっかり騙されて安心して。冷静になれば、あの声がコウノの声だって気付けたはずなのに。


下唇をグッと噛み締める。
悔しくて、憎くて。だけど、何も反撃出来ない自分が情けなくて。

涙なのか、掛けられた水なのかわからないけど、頬を雫が流れ落ちた。



「ねぇ、この後カラオケ行こ」



コウノ達は満足そうにトイレを出て行く。


人を虐めるだけ虐めておいて、よくもあんな風にすぐに笑えるもんだ。

あの集団に人間の温かい血は通ってないんだろう。