その途端、後退ろうもほんの一瞬遅し。
「口の端をニーッと上げて…」
そう言いながら、金髪男は私の両口角を無理矢理人差し指でグイッと上げてくる。
「っ、ちょっ……ちょっと‼︎何すんのよ」
すぐにその手を振り払って一歩距離を取る。
信じらんない!何考えてんのコイツ‼︎
金髪男に無理矢理上げられた口角に、まだハッキリと気持ち悪い指の感触が残ってる。それを消すようにワイシャツの袖でゴシゴシと強く擦った。
「何って、笑顔の練習」
「笑顔の練習?はっ、何それ……そんなの必要ないってば」
「何?じゃあサチはちゃんと笑えんの?笑ってみせろよ」
「だから無理。いきなり言われても楽しくないのに笑えないし」
意味不明な金髪男の発言にイライラが募って声が大きくなる。こんなにムカついて心が乱されたのは久しぶりだ。
「そもそも、もう一年近く笑ってないから」
「笑ってない?」
「そう。だから今更笑えなんて無理な話なの!」
わかった⁉︎もう二度とそんな話すんな、と言わんばかりに大袈裟にはぁっと息を吐いてそっぽを向くと、金髪男は一間置いて「なら」と懲りずに口を開いた。

