“……また来いよ。俺、いつもここにいるから”
この前の別れ際にあいつが言ってたことを思い出す。
別に、あいつがああやって言ってたから行くわけじゃない。
ただあの音楽が、どうしてか凄く気になる。ただそれだけなんだから……
時計広場に着くと、陽気な音楽がアップテンポな洋楽に変わった。ギターを弾いている男性の周りで、三人のダンサーが汗を流して踊っている。
「なんだ。あいつ、いないじゃん」
広場を見渡しても、あの金髪男の姿はない。
いつもいるって言ってたくせに。
あいつも所詮、そういう人間なんだ。
「馬鹿みたい…私」
ノコノコとこんな所まで来て。
何を期待してあいつの姿を一度でも探したのか。自分がアホらしくて笑える。
ふっと鼻で自嘲するように薄笑った時、「サチ」とあの金髪男の声が聞こえた。
「また来てくれたんだ」
そう言って、何が嬉しいのか、金髪男は声を弾ませて私に駆け寄って来る。