ーーーー…あ、ここは……あの時見た夢の中?

もしかして私、屋上で眠っちゃったの?


辺りは相変わらず白く霧が掛かり、数メートル先も見えない。

耳を澄ますも、やっぱり何も聞こえない。私だけの世界だ。


とりあえず、ここにいても仕方がない。少し冒険してみようかな。


私は先が見えない世界を何となく歩いた。



どれぐらい歩いただろうか。
時間の感覚がない。疲れも感じない。

景色も全く変わらない。

夢だから覚めれば現実の世界に戻れるんだろうけど。それにしても不思議な夢だ。



「あっ……あそこに何か落ちてる」



それは突然現れた。
真っ白な世界に、一冊のノート。

不自然なぐらいそれしかなくて、私は迷いつつもそれを手に取ってパラパラと捲った。


だけど、ノートの中もこの世界同様に真っ白で、私はノートを閉じた。

何のために夢の中に出て来たのか全く意味がわからない。


「変なの……」と、無音の世界に私の呟きが響く。


それにしても、何もないのは本当につまらない。退屈だ。

でも、どうやって起きればいいのかわからないし。


それに、起きたとしても……
やっぱり家には帰りにくい。


シュウの病室で見た哲二さんを思い出して、胸が締め付けられた。

私のこと、きっと呆れただろうな。
病室から出た後、一度も目を合わせてくれなかったし。

家に帰って哲二さんと顔を合わす勇気がない。


私には、行く場所がないんだ。