ーーーーーバタンッ‼︎‼︎
「ハァハァハァ……っ…」
家に着くと、乱暴にドアを閉めて凭れ掛かる。止まらずに走ったせいで息が苦しい……苦しくて苦しくて死にそうだ。
とにかく冷たい水が飲みたい。
力が抜けた体を無理矢理動かして玄関を上がろうとした時、ハッと息が止まった。
無造作に脱ぎ捨てられた赤いハイヒール。
……あの人のだ。
なんで…?だって、昨日帰ってきたばっかりなのに……
金縛りにあったように身体がカチコチに固まって動かない。
どうしよう……男の靴は無さそうだけど、このまま家を出ようか。
働かない頭を必死に回転させて考えていると、ガタッと物音が聞こえて恐る恐る顔を上げた。
「……っ…あ……」
狭くて短い廊下の先に、尖ったキラキラの付け爪を付けた指で煙草を吸いながら私を睨みつける母親の姿があった。
明るめのストレートな茶髪を右肩に流し、細い身体のラインがわかる短いワンピース。
唇にはテカテカに光ったピンク色のルージュ、目元はきつめのアイシャドウと付けまつ毛。瞳には茶色のカラーコンタクトが入っている。

