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「サチ?」


病院に着き、シュウの病室に向かってる途中で聞き知った声に呼ばれ足を止めた。

振り返ると、目を見開きながらも嬉しそうに口の端を上げて駆け寄ってくるお父さんの姿があった。



「お父さん……」



公園で話した日以来の再会に、胸がドキッと緊張で高鳴る。


そうだ。ここはお父さんの職場でもあったんだ。

シュウのことで頭がいっぱいだったから、お父さんの事を特に考えずにここまで来れた。いつもの私なら、お父さんがいる場所に行くって考えただけで構えてしまうけど。

いざ会うと、やっぱり緊張と気まずさで何を話したらいいのかわからなくなる。



「もしかして、こちらはサチがお世話になってる…?」



お父さんは私のすぐ側で同じように足を止めていた哲二さんと菜摘さんに気付いて言うと、私は「うん」と頷いた。



「こちら並木哲二さんと並木菜摘さん」


「初めまして。菅野と申します。いつも娘がお世話になっております」



私が二人を紹介すると、お父さんはポケットから名刺を取り出し慣れた手付きで哲二さんに渡した。



「こちらこそ初めまして。並木です。サチホさんには、私どもの方が世話になりっぱなしで」



哲二さんが「ハハ」っと笑いながら後頭部を掻くと、菜摘さんも「ええ、本当に」と微笑んだ。