手に取る物全てにシュウとの思い出が詰まってる。


真剣なシュウ、スネるシュウ、怒るシュウ、大きな口を開けて笑うシュウ、感動して泣くシュウ。

数ヶ月の内にシュウとの思い出が数え切れないほど増えて、どれも私の大切な宝物になった。


最後の一つをダンボールに入れる。



「さてと、他には……」



部屋を見渡すけれど、入れ忘れた物はないようだ。

ダンボールをガムテープでしっかりと閉める。


ちょっとした家具以外、何も無くなったシュウの部屋。

畳の上に横になり、天井を見上げる。



まだこれが現実なのかよくわからない。

この家に戻ってくると、病院での出来事が全て夢だったように思えるんだ。

夕方になればいつものようにシュウが玄関をガラッと開けて、「ただいま」って帰って来るんじゃないか。

家の裏にある空き地に行けば、シュウが特等席に座って空を見上げてるんじゃないか。

今も、襖をサッと開けて「サチ」って名前を呼んでくれるんじゃないかって。

そんな気がしてならないんだ。