「…おい。さっき言った事忘れんなよ?」
コウノは先生に聞こえないように私の耳元でそう言うと、パタパタと足音を響かせながら階段を昇って行った。
もし、このまま教室に行ったらコウノはきっといつものように私を……
「鷹野。お前も早く教室に行きなさい」
「……」
怖い……何をされるかわからない。
先週は体育館倉庫でバスケットボールを何度もぶつけられた後、閉じ込められて数時間出れなかった。
その前は髪の毛をカッターで切られたこともある。机の中にゴミが入ってるのなんて日常茶飯事だし。
今度は洋式トイレに頭を突っ込んでやろうか、って笑いながら言ってるのを聞いた。
考えるだけで、指先が冷たくなってくる。
コウノは鬼だ……いや、人間の血が通ってない悪魔。
「聞いてるのか、鷹野……って、おいっ‼︎」
私は私を呼び止める先生を無視して走り出した。スリッパが片方脱げながらも、階段を降りて昇降口に向かう。ヨレヨレの靴につま先を入れて、ちゃんと履かずに学校を飛び出した。

