あ、そうか……
私、菜摘さん達を待ってる間にこんな所で寝ちゃったんだ。



「サッちゃん……大丈夫?」


「え?」


「その…寝ながら泣いてたようだから」



泣い、てた…?

菜摘さんに言われて頬をそっと触る。指先に冷たい感触がして、初めて自分が泣いていたんだとわかった。


菜摘さんが鞄からハンカチを取り出して、私に差し出す。

今にも泣きそうな菜摘さんを少しでも安心させるように、「ありがとうございます」と微笑んで見せた。

私まで心配掛けちゃいけない。
しっかりしなくちゃ。



「もう先生の話は終わったんですか?哲二さんは?」


「病室よ。シュウちゃんのご両親に説明に行ったわ」


「そうですか」


「サッちゃん。これからシュウちゃんを移送することになったの」


「移送?」


「ここだと十分な設備がないから、前に検診を受けたあの病院に移すのよ。あそこの方がシュウちゃんのご両親も通いやすいし」



検診を受けた病院って言ったらお父さんが務める所か。

私達が育ち、出会った街。


あそこにシュウが移されるんだ。



「準備が出来次第、すぐに移されるそうなの。私達は一度旅館に戻ってチェックアウトをして、それから家に帰ってシュウちゃんの荷物を纏めるわ」


「え……?荷物を纏めるって?」



それってまさか……

シュウがあの家にはもう戻って来ないってことなの?