「その検診の結果も私に隠しててな。それを知ったのは昨日の夜だ」
検診をしてくれたのは哲二さんの元同僚で、その先生から哲二さんに電話があった。
入院のこと返事がまだないが急いだ方がいい、と。
寝耳に水だった哲二さんは、シュウの部屋で結果表を発見したらしい。
それを見つけた後、二人になる機会がなくて問い詰めることも出来ず、今日になってしまったと哲二さんは苦しげに言った。
「二人が計画してくれた旅行だ。問い詰めるのは、楽しい旅行が終わった時でいいと思った。なのに……っ、」
哲二さんは声を詰まらせた。
口元を皺くちゃな大きな手で覆う哲二さんの姿が目の端に映る。
目から流れた涙がその手の甲を伝っていくのも見えた。
「本当なら、この旅行を中止してでも入院させなきゃいけなかった。なのに、二、三日ぐらい無理させなきゃ大丈夫だろうって……」
「哲二さん……」
「私は医者失格だ。私は、自分の欲を優先したんだ。可愛い子供達と楽しい思い出を作りたくて、優先順位を間違えてしまった」
哲二さんは悪くない。
誰も悪くなんてない。
なのに、哲二さんは自分を責める。
なんて声を掛けたらいいのか、今の私には思い浮かばなかった。
待合室には置き時計の秒針と、私達の鼻を啜る音だけが響く。

