救急車に遅れて病院に着くと、菜摘さんに手を引かれて病院内を小走りで駆ける。
処置室の前で哲二さんが落ち着かない様子でウロウロと回っていて、菜摘さんが「あなたっ!」と声を掛けた。
「シュウちゃんは…?大丈夫なのよね?」
「……菜摘。シュウの家の番号、わかるか?」
哲二さんは菜摘さんの質問には答えない。それどころか、目も合わせようともせず視線を床に落とす。
「哲二さん……答えて下さい……シュウは、大丈夫なんですよね?」
「サッちゃん……」
「ただの……車酔いだって…シュウ、言ってました。そうなんですよね……?」
「……」
白い床を見ていた哲二さんは、苦しげに目を瞑った。閉じた瞼が震えている。
下唇が白くなるぐらい強く噛み、内側から沸き起こる何かを堪えているように見えた。
「そうだって、言って……」
そんな哲二さんの二の腕をグッと掴む。
「ただの車酔いだって……そう言って下さいよっ‼︎哲二さん‼︎‼︎」
私は哲二さんの体を大きく揺すりながら声を上げると、「うわあぁぁ……っ‼︎」とその場に座り込んだ。

