「あらら。シュウちゃんったら、まだ寝てるわね。旅行が楽しみ過ぎて昨日眠れなかったのかしら」
クスクス笑いながら、コートをハンガーに掛ける菜摘さん。哲二さんは座椅子に腰を掛けると、リモコンに手を伸ばしている。
「シュウ?掛け布団剥いじゃったら風邪引くよ」
私達が部屋を出る前にシュウに掛けた掛け布団を再び掛け直す。
ふと顔を覗くと、何か変な違和感を感じて「…シュウ?」と体を少し揺さ振った。
だけど、やっぱり反応はない。
ドクン、と心臓が鈍器で殴られたような鈍い音を立てる。
寝てる……違う、寝てるんじゃない。
「シュウ……シュウっ……⁉︎」
寝息が聞こえない。
体も冷たい。
顔色がさっきよりも一段と真っ青だ。
「どうした……っ?」
「哲二さんっ……、シュウが……シュウがっ‼︎」
息を、してない……
「シュウっ⁉︎」
すぐに哲二さんが駆け寄って来ると、シュウの胸に耳を当てる。
もう、何が起こってるのかわからなかった。
「菜摘‼︎救急車だ」
「は、はいっ‼︎」
哲二さんはシュウを仰向けにさせると、慣れた手付きで心臓マッサージを施す。
耳の端には菜摘さんが涙交じりの声で電話してる声が聞こえた。

