「ふぅ。いいお湯だったわ」
旅館に着くなり、私と菜摘さんはすぐに温泉に向かった。
色んな種類の温泉に浸かり、もちろん評判の露天風呂で景色を堪能し、時間にしたら一時間とちょっとだろうか。
女同士の話に花を咲かせて。まだまだ話し足りないけれど、旅行は始まったばかり。私たちは一旦温泉を出て、ぽかぽか陽気のまま部屋に戻った。
「あれ?哲二さんは?」
部屋に哲二さんの姿はなく、シュウがゴロンと横になっている。
「ああ、温泉に行ったよ」
「シュウは行かなかったの?」
「ちょっと車酔いしちゃって」
そう言って、シュウは気怠そうに身体を起こす。顔色が悪い。
これは相当気持ち悪いんだろう。
「大丈夫?何か冷たい飲み物買って来るよ」
「いや、平気。少し休んだらだいぶ良くなったから」
「そう?」
「うん。でも、もう少しだけ横になってるよ」
シュウは再び横になると目を瞑った。
それからすぐに哲二さんが温泉から戻ってきて、私達は少し旅館の周りを散歩することにした。
シュウに声を掛けるも返事はなく、微かに寝息が聞こえてくる。
「シュウ、寝ちゃったみたい」
「そのまま寝かせてあげましょう。きっと仕事で疲れてるのよ」
私達はシュウにメモを残し、旅館を出た。