私の勢いに圧倒されて目をパチクリさせるシュウ。
予想通りの反応が嬉しい。



「いいけど、突然どうしたの?」


「この前ね、菜摘さんが旅行番組見ながら久しぶりに温泉に行きたいわって言ってたの。哲二さんと菜摘さんにはお世話になってるし、そのお礼も兼ねて」


「ああ、そういうことか」


「それにね、私家族で旅行に行った記憶ないんだ。だから、私の大切な家族と旅行に行きたいなって思って」



この暮らしが終わる前に、皆との思い出が欲しかった。

何も考えず、ただ温泉と美味しい料理を楽しんで、哲二さんと菜摘さん、それにシュウに今までお世話になったお礼をしたかった。



そう。私は決意した。

この温泉から帰って来たら、お父さんに連絡する。

お父さんとの新しい生活を始めるために。




「……わかった」



シュウは私の気持ちを悟ったように、少し間を置いて言った。


だけど、その事には触れないで受け止めてくれたシュウの気遣いが凄く嬉しくて、自分で決めたことなのに涙が出そうになった。



「よし!思いっきり楽しもう!」



満面の笑みを浮かべるシュウに、私も満面の笑みを返す。

私たちは旅行の計画を立てながら、家までの道のりを歩いた。