「もう駄目だと思った。父さんはその時、前々から考えていた離婚を決意した。サチを連れてこの家を出ようと。でも、タイミング悪く病気が発覚してしまったんだ。サチを連れて行けなくなって悩んで悩んで……絶対迎えに来るって心に決めて家を出た。それからはさっき話した通りだ。仕事をしながら入退院を繰り返して、やっと迎えに行けるって思ったら、家はもぬけの殻だった」
お父さんは、はぁ、と息を吐くと、私に目を移した。
心なしか、目が潤んでるように見えて胸がドクッと音を立てた。
「だけど、ここでサチに再会した。いなくなったと思ってた娘が、今目の前にいる。ずっと…ずっと一緒に暮らしたかった。絶対迎えに行くと、それだけを心の支えに病気と戦ってきたんだ。嬉しくないわけないだろう。嬉しいなんて言葉じゃ表しきれない。父さんが病気に勝ったのはサチの存在のお陰なんだ」
「お父、さん……」
「今まで辛い思いを沢山させてすまない。助けてやれなくて本当に悪かったと思ってる」
深々と頭を下げたお父さんは、「だけど」と、頭を勢いよく上げて私の目を見据えた。
「これからは父さんがサチを守る。だから……だから、サチ。父さんと一緒に暮らさないか?」
「……え?一緒に、暮らす?」
「一から始めたい。家族として」
一瞬で頭が真っ白になった。
私を捨て、今まで音沙汰もなかった父。
だけど、ずっと会いたいと思ってた父。
信じてもいいのだろうか。
頭が、混乱する……

