お父さんの両親は、私が小学校に上がる頃に事故で他界していた。


それに、お父さんは一人っ子だから私から見て叔父や従兄弟なんていう存在もない。



「施設よりも実の母親の元で暮らしていた方がいいと思った。あんな母さんでも、血の繋がった子供に本当に酷いことは出来ないと思ったから。だけど、その判断がサチに辛い思いをさせてしまったなんて……それをこんなに近くにいたのに今まで知らなかったなんて、本当に父親失格だ」



お父さんの声が詰まる。
グスッと静かに鼻を啜ると、再び口を開いた。



「秀太君から聞いたよ。酷い虐待を受けて育ってきたこと」



そうか。私がネグレクトを受けてたこと、シュウが教えたんだ。

シュウをちらりと見ると、シュウは真っ直ぐ前を向いて遠い目をしている。



「ごめんな。父さんが早く迎えに行っていれば……」


「どのぐらい入院してたの?」


「家を出てから二ヶ月後に入院して、それから入退院を繰り返した」


「今は?」


「この通り。二年前に完治して、今は元気だよ」



そう言って、お父さんは無理に笑ってみせた。

目元は全く笑えていない。
今にも泣きそうな目をしてる。