ずずーっ。ずずーっ。
左手で何かを啜る音がした。
ばっとそちらを見ると、白地に桃色の矢羽模様の着物を着て、日本髪を結った母親が味噌汁を啜っていた。
「ほら、早く食べなさい」
私達のことを見ずに言うその威圧感に圧倒され、私も母の隣の席についた。
恐る恐る食事を口に運ぶ。不味くはないが、安全かどうか気が気でないので味はほとんどわからなかった。
――食事は安全、か……。
そう思った瞬間、はっと思い至ったことがあった。