ふと見ると、部屋に並べられた机の一つに弟の裕斗が座り、料理を口にしているのが目に入った。匂いを嗅いだり、おかずを摘みあげてじろじろ眺めたりしている。
「ねえ!」
声をかけると弟がばっと顔を上げた。
「姉ちゃん!」
「この旅館、なんかおかしいよね」
「うん。……料理は大丈夫みたいだけど」
「そっか……。」
呟いて顔を上げた、その時だった。