顔を洗って階下に降りると、父がいる。
「あれ、お母さんと裕斗は?」
「あぁ……。お前は帰ってきたもんな」
――ん、帰ってきた……?
嫌な予感がした。それ以上聞かない方が良い気がして、曖昧に頷く。
「それより、勉強とか大丈夫なのか?」
私の考えを察したのか、父が話題を変えてくれた。
「うん、あー、でもちょっとわからないところがあるから、先生に聞いてみるよ」
そう、本来受験生には勉強以外のことを考えている暇はないのだ。
私は頭を軽く振って嫌な考えを振り払うと、父が用意してくれたらしい朝食に手をつけた。