はじめの印象は『ボロい』


壁は触ればボロボロと剥がれそうだし。


でも、使っていなかったってわけでもなさそうだ。


ボロいけど、ホコリとかはあまり落ちていない。


ぽつんと置いてあるピアノもキレイである。


「ここ、自由に使っていいよ。」


…はい?


え、自由にって…?!


「伴奏者が一人で練習したいときに使ってるんだ。
3年生の先輩はもうすぐ引退だから…」


先輩は伴奏しないんですか?


「私もするけど、一人で練習するのは家で出来るからと思ってさ、あんまり使ってないの。」


じゃあ、お言葉にあまえて…


あ、でもこれは合唱部に入部前提じゃ…


でも、使い放題には惹かれる…!


「はい!これカギ!」


あ、なんか強制っぽいですね。


先輩、ニコニコしながら押しが強い…


でも、やってみたいって気持ちもあるから、


これから、よろしくお願いします!!


―――


そんなこんなで『合唱部』に入った。


でも、先輩にも本当の自分は出さない。


いや、出せない。


…アイツと会うまでは。