孤独は辛いし怖いので、桜の木を真剣に見ているふりをする。


あ、でも「うわあいつ根暗っぽいな」って思われたらどうしよう。


桜は無しだ、じゃあ蟻?いやそれも根暗だ。桜よりも根暗だ。


どうしようかと頭を悩ませていると、体にちょっとした衝撃が走った。


どうやらぶつかってきたのは、一人の男の子のようだ。


あ、こ、これはまさかあれか。ドンって体ぶつかって、ごめんってなって、いえいえこちらこそってなって、意気投合しちゃうあれか!


よーし、カモン、ごめん!ごめんって言って、ごめんって!


だけど期待は虚しく、ぶつかってきた男の子は気づかずに友達と喋っていた。


……うん、まあ、こんなこともあるよね。というかそんな少女漫画みたいなこと、あるわけないんだよね。


自分の長い髪をくるくると手で巻きながら、もう一度桜を見た。


高校の入学式は自然に桜が舞い散るものだと思ってたけど、違ったみたい。


少しもやもやの気分で溜息を吐くと、また体に衝撃が走った。