桜が舞ってるわけでもなく、小鳥のさえずりが聞こえるわけでもない春の日。


私、橘恋夏は一人、澄んだ空を仰いでいる。


今日は入学式。とうとう私も華の高校生。胸についているリボンをひらりと揺らしながら、今度は校庭の砂を見た。

別に私は不思議ちゃんなわけじゃない。どっちかって言ったらまあまあ普通の子。


成績は悪いけれど、妖精に憧れながら生きてきてないから、普通の子。


そんな私がなぜ一人なのか。それはまあ単純に、一緒に行くはずだったお友達が、熱を出しちゃっただけ。


一緒に行くくらい仲の良い友達がその子しかいなかったのに絶望したよ、私は。


まあでも仕方ない。中学と高校が一緒の子なんて、そうそういない、と思う。



「……ぼっちだ……」



周りはみんな、友達と楽しそうに話している。うう、くそう。


早く入学式始まらないかな、そうしたらこの孤独から救われるのに。


あっ、でもだめだ。教室に入っても一人だ。あっ、最悪。