「ねぇゆうちゃん、今日って何かテストあったっけ?」
「えっと、確か単語テストじゃなかった?」
「えぇー、そうだっけ!?忘れてたわ……」
信号待ちで頭を抱える千花を横目で笑いつつ、つい見とれてしまう。千花はほんのり茶色がかったゆるいくせっ毛を二つ結びにしていて、女の私から見てもとても可愛い。
「まったく、そう言いながらまた満点なんでしょ」
「満点じゃないよ、無理だよ〜」
そう。こんなことを言いながらこの女、勉強はできるのだ。更に運動能力も抜群で、マラソン大会ではシード、スーパーシードに選ばれた経験をもつ。天は二物を与えず、というが、あれは嘘なんじゃないかと疑いたくなる。
私自身、『勉強できそう』『運動できそう』などと言われるが、自慢できるほどではない。勉強は唯一千花に勝てる面だがほんのちょっとだし、運動神経はむしろ相当鈍く、高校で文化部に入っていたら悲惨なことになっていたと思う。ちなみに、私が運動できそうに見られるのは、この忌々しい体格のせいもある。身長170cmで肩幅が広く、救いなのはやや細身なことだけだ。周りの人、特に千花に言わせれば、
「スタイル良くてかっこいいよ」
だそうだが、私からしたら158cmの千花が羨ましい。千花は勿論めちゃくちゃモテるし。