「まあソラがハヤシ君の事を好きなのは分かっていたから本題はそこじゃないんだよね~。」
顔を赤らめる私に構わず海が楽しそうに話し始め、続けた。

「ソラ。月の妖精の噂って知ってる?」

「月の妖精?知らない。」

「最近学校で噂にはなっているんだけど、満月の夜にある儀式をすると、妖精を呼び出す事が出来て、その妖精が必ず恋愛を成就させてくれるんだって♪
ただこの儀式の内容がなかなか難しくて、まだ試した事のある人はいないらしいよ。」

「必ず恋愛を成就…」
私がそうつぶやくと海はすかさず

「ねっ♪ねっ♪ソラ♪やってみようよ♪」

「え~っ!?嫌だよ!高校生にもなって妖精なんて信じる訳ないじゃん!」

「信じてなくてもいいよ~!
どうせソラの事だから、ハヤシ君にアタックする方法を私が提案した所で一切行動に移さないでしょ!
だからこう言うおまじないみたいな事ならソラもやり易いかなって思って。」
海はニコニコとした表情で話している。

からかっている様子はない。
本当に私を想って言ってくれているのだろう。

「う~ん。分かったわ。やってみてもいいとは思うけど、その儀式?って難しいんでしょ?
私に出来るのかな…?
と言うか海!
私は好きな人海に教えたんだから、海も好きな人を教えなさいよ!」
思い出したように私は言った。

「え~。好きな人いないよ~。」
海は私の目を見、微笑みながら言った。

これは本当だ。
海は嘘をつく時は必ず目線が左下に逸れる癖がある。

「私は今恋をしてないから~。
ソラの恋を応援する係だよ♪
と、言う訳で!
今夜はちょうど満月だから今夜決行ね♪」

「っっ!?ちょっと待って!
今夜って急すぎるし、だいたい儀式の事も私まだ聞いてないし…!」

「大丈夫大丈夫♪
私もついてるし、実際の所儀式って全く難しい事じゃないから♪」

「…で?儀式って何をするの?」
私がじと~っとした表情で問う。

「それは今夜のお楽しみ~♪」

海がそう言ったタイミングでチャイムが鳴る。

「ほら。下校時刻だよ。帰ろう♪」
海に促され帰路についたが、下校中も海は儀式の事は教えてくれず、待ち合わせの時間と場所だけ一方的に決めて、その場は一度別れた。