玄関の引き戸を勢いよく開けて飛び込むように中に入ると、それに気づいた母親が、居間から顔をだし「しー、静かにね」と口の前で人差し指をたてたので、ピタッと静止した清人は、今度は足音を立てないように
ゆっくり、ゆっくり中に入り居間の中を覗くと大地はすやすやと寝息をたてていた。
「朝早くにお医者さんに連れて行ったのよ。
ただの風邪だったわ」
母親が清人の顔を見て微笑むと、その言葉を聞いた途端に涙がぶわっと溢れ出した。
「そんなに心配をしてくれてありがとうね。弟思いのお兄さんをもって大地も喜んでいるわ」
そんな母親の言葉に、頷くこともできなかった。
だって
もしかしたら、大地の熱は自分のせいだったかもしれないのだ。
安心した途端に、今度は鈴を置いて帰って来たことを思い出した。