「俺、今日は行かない。」

「…どうして?今日行かなかったらまた1ヶ月は紙芝居、見れないよ?」

鈴が毎月に一度、公園に来る紙芝居屋を心から楽しみにしているのは知っている。けれど清人はそんな鈴の気持ちさえ考える余裕がなかった。


「行かない…」


「どうかしたの?」

そう聞かれて、ようやく清人は大地の事を鈴に伝えた。



「もしかしたら、俺のせいかもしれない。」

「なぜ?」

「俺の身代わりになって、大地が呪われたのかもしれない。」


真剣に話す清人に、鈴はくすくす笑う。

「考え過ぎよ。大ちゃんはきっと風邪をひいちゃったのよ。」


「なんで、そんな風に言えるんだよ?

…鈴なんか


何も知らないくせに‼」


あの日、壁に書かれた血文字を鈴は見ていない。

だから軽々しくそんな風に言えるんだと思うと、清人はやりきれない気持ちで、鈴を置いて走り出した。


「きよちゃん、待ってよ‼私が悪かったから」

背中を追いかける言葉さえも知らんぷりをして


清人は振り返ることもなくがむしゃらに走り続けた。