「ドアは…まだこれからよ。 今度付けてくれるって言ってたわ。 だから今はドアがあるふりをするのよ」 女って変な所にこだわるから面倒くさい。 清人は肩をすくませながら 「鍵もあるふりか?」と聞いた。 すると鈴は「きよちゃん、手をだして」 と両手を握りしめながら近づいてくる。 清人は言われるまま右手でお椀の形を作りながら鈴に突き出す。 「鍵よ。私が作ったの」 そう言って、握りしめていた手を、清人の右手の上でひらくと 清人の手のひらに小さな鍵が落ちた。