「…お邪魔しますを言えばいいのか?」
すると、鈴は首を横に大きく振った。
「違うわ。ここは、私ときよちゃん、二人きりのお家よ‼」
「…だから?」
こういう時、最後まで言い切らずに、全て言わなくても分かるでしょ?
と、いった感じの女の子の態度は、どの年代の男にとっても、とても面倒なものである。
清人は、鈴の返事を待っていたけど
鈴は、ますます口を尖らせた。
「なんで分からないのかしら。
家に入る時には鍵を開けなきゃ入れないのよ」
鍵?
そう言われても
この掘っ建て小屋には鍵穴どころか、ドアすら無い。
清人は不思議でたまらなくて、ドアのついていない入り口を指差して首を傾げた。


