「父も母も…兄の思い出が詰まったあの家から出るつもりはらありませんでした。
それは父が会社で偉い立場になっても
お金をたくさん貰っても
あの家を手放すつもりはなかったんです。
あの家を手放す事は、兄との思い出を手放すのと同じだったんです。
それがある日
父の昇進祝いで初めて家族で旅行に行った時
あの町は何十年に一度の大雨が続き
家族が家に戻った時には
あの辺一帯は山から崩れ落ちた土砂で全て壊れて
何もかもがなくなってしまっていたんです。」
大地の話しを聞きながら
昨夜見た古い新聞に大きな災害の記事が載っていた事を思い出しながら頷いた。
もう二度と
大切な家族を失いたくなかった清人の父は
山から離れたこの場所に全財産を使って新しい拠点を建てたのだ。
家族を守るために
清人の父が決断した事に間違いはない。
「でもこの場所に
兄さんの思いでは何ひとつなかったんです。
そんな時
母が秘密基地の理由を思い出したんです。
兄が恋人と交わした約束を…。」
それはきっと
清人と鈴が交わした約束のことだろう…。


