碧くん…碧くん…


あたしの頭も心も…

碧くんでいっぱいだよ。


もうこれ以上入る余地もないのに、毎日膨らんでいくこの気持ち…


もっと近づきたい。
もっと知りたい。

もっともっと…碧くんを独り占めしたいよ…


大好きなのに泣きたくなる。

碧くんの横顔を見ていると胸が苦しくなる。


「篠田さん?」

気づくとあたし立ち止まってた。


「あ、碧くん…」


もう…胸がいっぱい。

言わなきゃ。言葉にしなきゃ…

あたしはもう…



「あのね…」

「ん?」


碧くんの優しい声。

優しい瞳。


「あのね、あたし…」


「おぅ!碧じゃん、何してんだよぉ。遅えから迷ったのかと思うじゃん」


朔?


朔が走るたびなんかジャラジャラ音がする。


騒がしい男め。


「ごめんごめん。篠田さんと一緒に帰ってた」


碧くんは朔に笑いかける。


「じゃあな、美雨」


朔は碧くんの肩に手を回し、手を軽く上げて歩き出す。


「ちょ、ちょっと…あたしも家こっち!」



背が高い2人に小走りで付いていく。


「碧くん、後ろから幼稚園児がついて来るんだけど」


こそこそ喋るポーズでめっちゃ聞えよがしなんですけど!



「幼稚園児じゃない!朔のバカ‼︎」


カバンで朔を叩こうとしたが避けられた。


「く、くそー‼︎」


追いかけるあたしから朔がキャッキャと笑いながら逃げる。


ほんとにこいつ…邪魔しよって…



碧くん、笑ってる。

呆れてる?


目が合った。


優しい碧くんの瞳にまた胸が苦しくなる。


好きが溢れる…


茜色の空気の中で。