身だしなみもそこそに家を出る。

お気に入りの青い傘を片手にドアを開けた。


「いってきまぁーーす。」




誰もいない部屋に声が響く。

やっぱり、少し寂しいかも。



…少し、少しだけね。

そもそも、こんなに可愛い娘を一人にして出て行くお父さんとお兄ちゃんってある?

…本気で可愛いって思ってるわけじゃないよ?



あと、家族が出て行ったって言ってもそこまで複雑な家庭環境じゃない。




私が小さい頃から海外で働いてるお母さん。

ファッションデザイナーの仕事をしているんだっけ。


そんなお母さんを愛してやまないお父さんは


「ママ不足だっ!!」


とか何とか言って、私が中学を卒業してからすぐヨーロッパに旅立った。


『家賃は払うから安心しろ!いい加減彼氏作れよ。』

てゆー、余計な一言がついた置き手紙を居間に置いて、4月が始まる頃にはいなかったな。

彼氏作れよ、なんて、友達と電話で恋話してるだけでも大騒ぎだったくせに。

無事にお母さんに会えたかな。