精一杯の背伸びを





 榊田君と小夜ちゃんは一緒に故郷に帰ったらしい。


 旅は道連れ、帰郷も道連れだ。



「おい。俺は鬼か。具合悪い人間を窓から放り投げるとでも」



 先ほどよりも不機嫌度が増してしまったようだ。



「普段、榊田君の毒舌しか見てない人はそう思ってるかもね」



 私はくすくす口元を押さえ笑った。



「何が良い話だ。くだらない」



「小夜ちゃんが何も言わなかったのに気づいたんでしょ?それで一番後ろの席を譲ってもらって寝かせたけど、やっぱりダメでバスを降りて休憩させたとか!」



 私は勢い良く話し、榊田君を見た。


 しかし、相変わらず不機嫌な顔だ。


 端整な顔に眉間の皺が見事にある。


 その歪めた顔さえ綺麗なのだから羨ましいものだ。



「いびきがうるさくて眠れなかったからだ。瀬戸はそのついで」



「そう!そう言って休憩所で降りたんだってね。それだよ!榊田君!」



「何が?」



 彼はため息を吐いた。



「当たり前のようで、そういうことってできないものだよ?小夜ちゃんが気持ち悪いとか降りたいって言ったわけじゃないのに。本当に榊田君は優しい!!」



「瀬戸が俺を褒めたっていうのが良い話か?」



「あと朔ちゃんも榊田君のこと見直してたよ。広也じゃなくて真のフェミニストは榊田だ!って」



 私は朔ちゃんのまねをして言った。