精一杯の背伸びを









「どうせ仁の話だろ?」



 バレてたか。


 午後十時、レストランのソファーにもたれると、のっけから言われた。


 もう仁くんの呼び捨ては榊田君の中で定着されてしまっている。


 まるで共通の知り合いの話をこれからするようだ。


 とりあえず、おなかが空いたからすぐに料理を注文する。



「榊田君は鋭いな。聞いてくれる?」



「それが交換条件だろ?俺に拒否権なんてない」



 私は食べながらお盆の出来事を話した。



 榊田君は何も言わずに、ただじっと私の話を聞いている。


 というより食事に夢中だ。



「で、どうかな?」



 食事も済み、デザートがきたところで私は榊田君に聞いた。



「何が?」



 私は唇を尖らせた。


 こんなところだけ、とぼけるんだから。



「可能性はあるよね?」



 榊田君はコーヒーを飲んだ。


 その様子は、まさに優雅でマイペースだ。


 彼がいる空間だけ王宮の一室なのではないかと錯覚してしまうぐらい。



「そうだな、前提条件次第だ。第一に、仁が鋭くて、かつ、水野のことを知り尽くしていて、お前の気持ちに気付いているという前提が成立すること」



「うん。お互いのことを一番よく知っているのは間違いない」



 私は榊田君の言葉を遮った。



「第二に、今の話が水野の妄想、または過大な誇張でないこと」



「妄想も過大な誇張もない!」



 私は榊田君にきっぱりと言い切る。